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はじめに
レコードを再生するときに出るさまざまなノイズはとても耳障り。レコード音楽のノイズ波形をフリーの音声編集ソフトaudacityで修復して音楽を保存すれば、ノイズの少ない音楽が楽しめます。清掃で取りきれないレコードの汚れやホコリのノイズが減らせます。今回の記事では、レコード針の上げ下げ時に発生するノイズを除去する方法について説明します。
レコードを再生するときにレコード針がレコード盤に下りた時のパチッやレコード盤から上がる時のパチ!という音、レコードのホコリや傷によるプチッとかプチ、プチというノイズはとても耳障りです。レコードの音声をUSBオーディオキャプチャケーブルでレコードプレーヤーからパソコンに取り込み、audacityの編集機能を使ってノイズを減らしてみました。
レコード針の上げ下げ時の単純なノイズは、ソフトの無音化機能でなくします。たんねんに波形修正作業(修復)を行えば、音楽に紛れこんだ細かいノイズもある程度減らせます。今回の記事で無音化の作業を紹介し、次回の記事で細かなノイズを減らすための作業を紹介します。
単純なノイズの修復前後のようす
修復対象のノイズ入り音声と単純なノイズを修復したあとのようすを説明していきます。
音声の取り込みに使うレコードのホコリや汚れは、あらかじめきれいにしておきます。audacityのバージョンは2.4.1。OSがWindows11のパソコンで作業します。
USBオーディオキャプチャーケーブルでレコードの音楽をパソコンに取り込む作業については、以前の”オーディオケーブルを使ってみる”の記事を参考にしてください。
下の画像がEPレコードの音楽をaudacityでパソコンに取り込んだ波形表示です。A面を取り込んだあとに続けてB面を取り込んであることを白文字で示してあります。

この波形全体の中から、レコード針がレコード盤に下りたときとレコード針から上がるときのノイズの部分を順番に消していきます。

レコードの先頭部分のノイズ除去
レコードのA面の最初にレコード針を下ろしたときのノイズ部分を拡大して示します。最初からA面の音楽が始まるまでをマウスでドラッグして(薄く反転した範囲)選択してあります。選択範囲を拡大して見たいときはプラスの虫眼鏡、縮めたいときはマイナスの虫眼鏡のボタンを操作します。

こちらの音声は実際に耳で聴こえるノイズ音です。
次に”無音化”のボタンを押して選択した範囲のノイズをなくします。

A面とB面を入れ替える部分のノイズ除去
次はA面の音楽が終わってレコード針が上がるときのノイズと、続けてB面の音楽を掛けたときにレコード針が下がるときのノイズを消します。
A面の音楽が終わってからB面の音楽が始まるまでの範囲を、マウスでドラッグして選択します(反転表示している部分)。

選択した範囲を拡大表示させます。選択した範囲の中央辺りにマウスのカーソルを置き、プラスの虫眼鏡のボタンで拡大できます。マウスのカーソルがあると見にくくなるので、カーソルは見えなくして下の画像を撮影しました。
こちらの音声はA面の音楽が終わってレコード針が上がったときのノイズ音です。
こちらの音声はB面の音楽の前のレコード針が下りたときのノイズ音です。

先頭部分のノイズの無音化と同様に、”無音化”のボタンを押して選択した範囲のノイズをなくします。

最後の部分のノイズ除去
B面の音声の最後でレコード針が上がるときのノイズも同様にして除去します。
B面の音楽が終わってからレコード針が上がって音声波形の最後までの範囲を、マウスでドラッグして選択します(反転表示している部分)。

選択した範囲を拡大表示させます。

B面の音楽が終わってレコード針が上がったときのノイズ音はこちらです。
”無音化”のボタンを押して選択した範囲のノイズをなくします。

今回取り上げる単純なノイズの除去についての説明は以上です。
ノイズを除去したあとの波形全体の様子を見てみます。

目につくノイズはなくなりましたが、A面とB面の音楽の間がだいぶ空いてしまいました。この状態でデジタルファイルとして書き出して保存すると、音楽を再生するときにA面が終わってからB面が始まるまでにだいぶ待たされてしまいます。
A面とB面の間の空白時間を詰める
そこで、この間をカットしてA面とB面の間の時間を適当に縮めます。
カットするだけの時間の範囲を選択して、”カット”を実行します。

下の画像のようにA面とB面の音楽の間が縮まりました。

同じ手順で、波形の先頭部分と最終部分の空白時間を適当に詰めておきます。
先頭部分の空白時間を詰める
先頭部分のカットする部分を選択して、音楽が始まるまでの時間を適当な長さ(2秒程度)にします。

A面の音楽がファイルにアクセス後に待たずに聴けるようになりました。
最後の部分の空白時間も詰める
波形の最後も空白時間をなるべくカットして、音楽終了後すみやかにファイルを終了させます。

仕上がった波形の全体
波形を最初と中と最後の空白時間をカットして調整した後のようすです。

レコード針の上がり下がりによる単純なノイズを除去し、空白時間を適切に調節する作業は終了です。
以上で、ホコリや傷がついてなくて状態の良いレコード盤のノイズ除去は作業終了です。
分散するノイズの個別処理
音声ファイルを先頭から再生し、波形を見たり音声を聴きながらノイズが聴こえるところを見つけてノイズを修復します。
ノイズの発生場所を見つけたら、その付近にカーソルを合わせて波形をずらしたり拡大したりしてノイズの波形を確認します。
ノイズの形は様々で、その形の違いでノイズの聴こえ方も違います。
ノイズのない音声はきれいに波打つ形で続いていますが、ノイズは急激に立ち上がったり下がったりして形が変化しているのでそれとわかります。
見つけにくいのは普通の波形の一部にトゲのように乗っかっているノイズです。ノイズの波形の範囲を128サンプルポイント以下にまで絞った上で、その範囲を選択して、修復を行います。修復は尖った部分(ノイズ)を前後の波形のカーブに沿うような整形をしてくれます。
続いている音楽の中で急激に瞬間的に変化する部分がノイズとして聴こえるわけで、本来の音楽が急激な変化の波形を含むものだと、ノイズとの見分けがつきにくくなります。ノイズと思って本来の音声を修復(なだらかな波形にして)しまい、音質の劣化につながることも十分にありえます。あまり作業を拙速にかつやりすぎないのが大切です。
具体的な作業の内容については次回の記事”レコードのパチパチノイズをオーディオ編集ソフトで減らす”で説明します。
感想
何枚もレコードのノイズ修復を繰り返していくうちに、簡単なノイズ除去作業と丁寧な修復作業のやりかたが理解できました。その違いもわかってきました。
ノイズの場所を見つけ出すコツや、どの部分までノイズとして波形の修復を行うのかがわかるまでには、経験と慣れが必要です。経験を積んで丁寧な仕事をすれば、良い品質の音楽ファイルに仕上げられそうです。ハマればどれだけでも時間を掛けて修復作業をしたくなる底なしの魅力も感じます。
ただし、本来の音声に紛れ込んでいるノイズを取り除くのは難しそうです。細かな波形整形が必要になりますが、今回使用したツールでは、波形を自由に作り出すことはできません。削りすぎた波形は削った直後は元に戻せますが、その後では元に戻せないので、作業は慎重にやらなければなりません。ある程度までノイズが減らせたら、ほどほどのところで満足すべきなのでしょう。ある程度のノイズはレコード音楽の証でもありますからね。
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