感想
日本が抱えるさまざまな問題を様々な視点から具体的に取り上げて、わたしたちはこれからどう生きていくべきかを考えさせてくれます。20年前に書かれてますが、20年経っても問題はほとんど解決していない、むしろ悪くなっていると思わされてしまいました。
本書を読んでみると、問題点ははっきりしているのになぜ日本は良くなっていかないのだろうと考えさせられます。政治家や政党は櫻井さんのこの著書を読んで、これからの日本を良くするためには何が問題で、どうやって解決していくかについての勉強会をしてもらいたい。問題意識を共有し、それに立脚した将来展望を議論してもらいたい。国会でもそういう議論を国民に見せてもらいたい。それが今の日本の閉塞感を打ち破る第一歩のような気がします。
本書の内容で記憶に残るところを列挙してみます。
第二章 世界の潮流に逆行する日本の教育
部分的に引用します。
日本は自由保育、自由教育からいまだに抜け出していないが欧米では日本と正反対の教育が行われている。アメリカの子どもたちの8割以上が先生の言うことは聞かなければならないと言っているように、アメリカの学校では一に規律、二に規律、三も規律という厳しい指導が行われている。それは欧米社会がいったん、自由放任主義で教育をしてみたけれど、あまりにも問題が多すぎることに気付いて反省したからだと思う。
この章を読んでみて思うこと。20年後の日本の今はどうなんだろう?ゆとり教育は詰め込み教育への揺り戻し?はしたようだけど、団体行動とか規律とか道徳とかが見直されたとは聞いてない気がします。幼いときにきちんとしつけることは子どもたちのことを思えばいちばん大事なポイントだとわたしも思います。
第三章 高齢化社会と老人介護
富山県の八尾が取り上げられています。
「おわら風の盆」で年老いた夫婦の関係が取り上げられます。妻が夫が演奏する凛々しい姿に惚れ直し、夫が妻の美しい踊り姿に惚れ直す。そしてお互いに尊敬しあう。こういう見方で取り上げられると、たしかにそのとおりだと思いました。羨ましいですね。
第四章 「環境」はわたしたち自身の問題だ
日の出町のゴミ最終処分場のことが取り上げられています。
ゴミ処分の方法を初めて知りました。大雑把な言い方ですが、大きな穴を掘った粘土層に、厚さ1.5ミリメートルのゴムシートを張って、その上に1.5メートルほどの厚さに保護土を盛り、その上にゴミを埋めていくというものです。粘土層の下には地下水の集排水管を張り巡らして監視したり対処するというものです。
素人目にも完全とは言えないです。汚染水が地下を巡っての環境汚染。なるほどそういうことだったのかと初めて納得です。ゴミを減らすのが最優先だと思います。
きりがないので、これくらいにしておきます。
櫻井よしこさんはかつて日本テレビのニュースキャスターのときに見た記憶と、時々新聞の意見広告で活動されているんだなというぐらいの認識でした。
櫻井よしこさんの著書を初めて読んで感銘を受けました。後半の”若者たちへ、仕事とはなにか”では、櫻井さんが今の仕事につくまでに良い影響を与えてくれた上司と自分の取り組み方のエピソードを語ってくれます。問題を指摘するだけではなくて、生きる希望を与えてくれます。単なる評論家ではありません。これからは櫻井さんの活動に関心を持っていきます(2021/01/21)
以下は、本書の紹介文の引用です。
お金や物は、人間の心を豊かにする手段である。しかし、いつしかお金や物を多く持つことが、多くの日本人の目的になってしまった。そんな価値観に染まり、心を置き忘れて育った子どもや若者たちに、その責任を追求しても、それはお門違いというものだ。彼らを夢のない、心なき人間に育ててしまった責任は、親、大人たち以外にない。これを失敗と言わずしてなんと言うのか。日本再生の方途を問う力作評論。
長いですが、本書「まえがき」よりの部分も引用しておきます。
どんな人にも社会にも失敗はつきものです。だからこそ、失敗したときには立ち直ることが大切です。立ち直りのプロセスで自分の姿を見つめ、その自分を大きな枠で形作ってきた日本の社会を見つめ、歴史を学んでいくことで、わたしたちは成長していくことができます。
しかし、失敗から学ぶためには、勇気と知性が必要です。心して取りかかることが必要です。そのような勇気や知性や心構えは、ちょっと面映い言い方になりますが、愛から生まれると私は考えています。
子どもを愛し、若い世代を愛し、ふるさとやこの国を愛する気持ちから、失敗を良い教訓にしていくために必要なあらゆる力がわいてくると信じています。