5年3組リョウタ組(石田衣良)



5年3組リョウタ組 (角川文庫)
[感想]
久しぶりの石田衣良さんの作品。
小学校の生徒と先生との間で繰り広げられる4つのストーリーです。
2つ目まで読み終わりましたが、忘れないうちにメモ。
1つ目、4月の嵐
 厳しい父親と、それに押しつぶされそうになっている息子の物語。
 反抗したくてもできないやさしい少年、その葛藤が授業中のエスケープに表れる。
 その少年に真剣に向き合うリョウタ先生。
 現実でもこんな先生がいてほしいと思わされます。ラストも現実的です。
2つ目、七月の冷たい風
 登校拒否になった若い男の先生。その事情を聞き出すうちに、先生同士のいじめが わかってきます。
 強い者と弱いもの、強いものを悪いと決めつけられない先生の世界。
 思ってもみない世界が開かれています。
 この話の結末も、石田作品らしく、人間への希望にあふれています。(2013.01.30)
3つ目、十二月みんなの家
 クラス委員をしている真一郎の家が火事で半焼。
 兄の善一郎と二人で火をつけたと警察で告白します。
 大騒ぎになる学校。
 実際は、兄が単独で火をつけたとわかるのですが、それでも心に傷を負った真一郎。
 学校に向かえるときに、どのように皆で接するのかが この話のテーマです。
 クラスの皆で、校庭に家を建てようということになります。
 ちょっとストーリーに無理があるかな・・
4つ目、3月クラス競争の終わり
 クラス競争で、毎回ビリ争いをしている5年3組。
 良太先生の熱意に、クラスのみんなも共感し出して、「クラス競争で1位を目指そう」が合言葉になります。
 自主的な取り組みでスタートし、どんどん順位が上がります。 でも、そこが日本人の悲しいところ。まじめ一方なんですね。
 余裕がないというか。 次第に、手段が目的になって、クラスの中に軋轢が出てきます。
 見えないいじめですね。
 そんな様子に一切気付かなかったリョウタ先生。
 もうどうしようもない土壇場で取った行動。
 現実にはあり得ない終わり方だと思いますが、
 こういう終わり方しかなかったのかなという気もしてきます。
子どもの頃のことなんて覚えていませんが、”きっと、昔も今も大変なんだ”ということを改めて考えさせられた、一冊でした。(2013.02.06記)
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