架空通貨(池井戸潤)

桜

感想

ようやく見つけて読んで池井戸潤の初期の出世作という期待を裏切りませんでした。
銀行とか金融の内幕がわかるというのはもちろんですが、通貨について改めて考えさせてくれたという点で興味深いと思います。
冒険活劇の面でも楽しめます。主人公の辛島がトロッコの軌道からぶら下がって向かってくるトロッコをやり過ごしたり、危うく谷底に落ちそうになるシーンなどはまるで映画を見ているようで手に汗を握ります。
冒険活劇につきもののラブロマンスは残念ながら?出てきません。
辛島が元商社マンで社会科教師という設定と、一緒に行動する教え子の麻紀が高校生なので、ロマンスとなると危なすぎ。
重要な登場人物の一人の加賀とは、かなりそういう雰囲気を漂わせてくれますが、お色気シーンがもうすこしあったら読者はうれしいかも。
もっとも、著者の池井戸さんはそういう方向にはあまりいかない方かな。その後の作品でもあまり見かけないような。
そういう意味では作者の方向性が最初からこの作品ではっきり表されているのかもしれません。考えすぎ?
作品のテーマの「架空通貨」、興味深いですね。
しばらく前に世の中を賑わせた”ビットコイン”は”暗号資産”と呼ばれるようになりましたが、仮想通貨のグローバルな呼び方だとか。
仮想と架空?作品中の架空通貨「安房札」は田神町だけで通用しましたが、暗号資産は世界中で通用する架空通貨?
そういうわけではなくて、仮想と架空は全然違っているんでしょうが、池井戸さんに暗号資産をテーマにした作品をいつか書いてもらえるとうれしい。
(2020/04/09)
裏表紙の紹介文を引用しておきます。

女子高生・麻紀の父が経営する会社が破綻した……。かつて商社マンだった社会科教師の辛島は、その真相を確かめるべく麻紀とともに動き出した。やがて、二人がたどり着いたのは、「円」以上に力を持った闇のカネによって、人や企業、銀行までもが支配された街だった。

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