暗黒旅人(大沢在昌)



暗黒旅人 (講談社文庫)

[感想]

最初の設定の奇妙さと言い、4つの章にわたって起こるちょっと信じられない4つの奇怪な出来事。強引な感じもしますが、不思議の世界に導いてくれう。こういうのがホラー小説というんですね。
水、火、木、土にまつわる邪悪と使命人御岳(みたけ)の闘い。そこには、ただ邪悪と正義の戦いだけでなしに、邪悪をも肯定しなければ生きていけない人々の哀しみも描かれていきます。主人公とそこで出会う様々な美人との絡みも描かれていますし、恋人由子(ゆうこ)との葛藤と深い愛がずっと根底に流れていきます。こういうところはいつもの大沢タッチかな。
2章から登場する樫村刑事がストーリーをつなげていくうえで重要な役割を果たしていきます。なぜか御岳の行動が怪しいと分かっていながら泳がせている、そのわけは何か?最後の方で明かされますが、なるほどと思いましたね。
文庫本の解説で、かなりていねいに大沢在昌とホラー小説とのかかわりについて触れられています。大沢作品には、いろいろな作品でホラーが登場することがよくわかるとともに、日本のハードボイルド小説のジャンルを広げていこうとチャレンジされていることがよくわかりました。(2016.10.12)
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