感想
主人公の倉田は、銀行員であり出向先のナカノ電子部品では懸命に会社に溶け込もうと努力するが、なかなか思い通りにいかないでいます。その逆境の中で、社内の不正に気づきそれを暴いていく、それも池井戸潤ならではの銀行が絡んだ展開が楽しめます。いつもの池井戸作品の一つと言えますが、この作品ではストーリー中で終始ストーカーが絡んでくることが目新しいです。家族全員がその騒ぎに巻き込まれ自分や息子が怪我もします。ストーカーが一人でなかったとか、ストーリーを面白くする工夫がされています。
人に対して自分を強く主張できない主人公の倉田が、周りの助けも借りながら苦しみながらも、いろいろな困難に対して筋を通して生きていく。その姿は、池井戸潤作品に共通したものであり、私を引きつける点です(2020/04/20)
最後に裏表紙の紹介文を引用しておきます。
真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。部屋からは盗聴器まで見つかった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく。直木賞作家が、”身近に潜む恐怖”を描く文庫オリジナル長編。
アップしてから気づきましたが、この本は1年前にも読んで感想を書いてました。2度読みです。