『感想』
前書きも目次もなしで、はじめから最後まで全編が田中角栄氏が自分で語る調子で構成されています。文体は確かに石原慎太郎氏で、最初は戸惑いながらも話の中身に引き込まれて一気に読み終えてしまいます。あとがきに石原氏が初めて登場します。
本書を読んで驚き感じたことが2点あります。
1点目は田中角栄氏への認識が大きく改めさせられたこと。
田中角栄氏が全盛の頃から凋落し亡くなるまでの時代を生きた私としては、語られる事件の大枠はなんとなく知っていました。で、一般に言われていたように私も田中氏が犯罪を犯したものと信じ込まされていました。けれども真相は違いますね。アメリカが田中氏を潰したこと。それは田中氏がアメリカの逆鱗に触れてしまったこと。それに尽きるようです。田中氏はあくまでも日本の将来のためを思い、すべてのことを行った。認識を改めました。
2点目は、石原慎太郎氏が本書を著したことです。確かに当時は石原氏が反田中の急先鋒だった記憶があります。それがなぜ今になって。驚きました。
その答えはあとがきに記されていますが、石原氏が、田中角栄氏を天才と認め、その才能を惜しみ、ロッキード事件がなければ、田中氏がその後も健在であれば、その後の日本が今よりももっと良くなっていたに違いないと確信されたことにあります。
現状の日本には「日本を真に愛して行動する政治家がいない」と嘆く風潮があるようですが、私もその一人です。最近特にそう感じます。そして「田中氏が今の世の中に生きていれば、あのブルドーザーで日本を立て直してくれるのになあ」と空想もしてしまいます。本書を読んで今更ながらに強く思いました。
ないものねだりなんでしょうかね。そんな事はありません。政治家はもっと田中角栄氏の考え方や行動の記録を勉強すべきでしょう。そして自分なりに”日本を愛し、それを行動に移すにはどうしたらよいか”を考え、実践すべきでしょう。そう強く思います。希望は持っていたい(2021/06/10)
以下、本の帯の紹介文を引用します。
石原慎太郎が田中角栄に成り代わって書いた衝撃のモノローグ!
高等小学校卒。
幼い頃から身につけた金銭感覚と類稀なる人間通を武器に総理にまで伸し上がった男の知られざる素顔
反田中の急先鋒だった石原が、
今なぜ
「田中角栄」に惹かれるのか。
家族とは何か?
成功するとはどういうことか?
女は男にとってどんな存在なのか?