一路(浅田次郎)



一路(上) (中公文庫)

一路(下) (中公文庫)

[感想]

テレビドラマを随分前に見ていたが筋は覚えていない。原作がどうだったのか興味はあった。
上巻の前半は、参勤交代の進行も一致団結していて、あまりにもうまく行き過ぎていて不自然な感じだった。
それが、一路と真吾の両方の父親とも叔父の将監に暗殺されたことを知らされたことと、事情を知っている参勤交代の一行の支援に支えられての行軍だということがわかった時点から、お家騒動が絡んできて話が面白くなってきた。
宿場や難所でのエピソードで人情味を織り交ぜていることで浅田色が出ていると思う。
旧中山道という普段馴染みの薄いルートでの観光案内という一面でも楽しめる。(上巻読了時点2018.01.01)

下巻を読み終わった。面白かった。
各所で出てくる「御供頭心得」を読むのもだんだん慣れてくる。
ストーリーの中で面白いのがいくつかあるがその3つを上げる。

一つが、「前途遼遠」ででてくる「風陣の秘走」
3人が組みになって順次先頭を交代しながら長距離を駆け抜ける技。
三十二里を三刻半で駆け抜けるというのだから、およそ130kmを7時間で、時速17kmあまりという計算になる。
これは、箱根駅伝競争の一区間20kmほどを1時間ほどで駆ける選手たちに引けを取らない。
しかも休み無しに走り抜けるというのだから、やはり超人技、秘技なのであろう。
三人が江戸に到着したあとで、銭湯で繰り広げられるエピソードも愉快だ。
浅田さんはときどきこういう面白い話を作品に織り交ぜてくれるので楽しい。

二つ目が、同じく「前途遼遠」で出てくる加賀藩のお姫様のお話。
加賀百万石とはよく聞く言葉で、私は隣県の富山に住んでいたので馴染みがあるが、あまりその実態は知らなかった。
作中で、お姫様のあまりにも世離れしたふるまいや考え方に、改めて加賀百万石の大変さを思い知らされた気がする。

三つめが、解説で檀ふみさんも触れているが、御殿様の行状や考え方を知ることができるのが新鮮。
逢坂のお殿様のバカ殿様のふりをしているわけが興味深い。
最後まで出世を望まずに芯を通したところは、浅田さんの言いたかったことの一つだろうか。
「大義じゃ」とか、「祝着」とか行ってだけいるのが名君の条件とはなかなか面白い見方。

他にも取り上げたいエピソードはいくつもあるが、とにかく読み物としてとても楽しく読ませてもらえた。

そして旧中山道のいろいろな宿場町、初めて聞く地名が多かったが、
この先、何かで聞く機会があるたびに、何か懐かしく思い出されそうな気がする。(2018.01.08)
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