片目の猿(道尾秀介)



片眼の猿―One-eyed monkeys (新潮文庫)

[感想]

単なる探偵ミステリー小説と思って読み進めると、最後にトリックが仕込まれている。さらにそのあとにもありということで何度も楽しまさせてもらった。
タイトルの「片目の猿」99匹の片目の猿の集団の中では、1匹の両目の猿が特異な存在となってしまい、最後は片目をつぶして集団と同化しようとするという寓話だが、この心理が全編を貫くテーマになっている。廻りと違う特徴を持つ人間にとって、自我を保つのがいかに大変か?作中では「自尊心」という言葉を使っているが、調和を重んじる日本の社会では特に難しいことだ。
特異な耳を持つ主人公についての秘密が明かされる最後の部分は、何か人間ぽくって解説で説明されていた、作者が目指す”人間っぽい本格ミステリ”の表れの一つなのかなと感じた。少し暖かい気持ちで読み終えることができた。(2017.05.23)
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