太陽の子(灰谷健次郎)



太陽の子 (角川文庫)

[感想]

灰谷健次郎作の「太陽の子」角川文庫を読みました。古書店で何気なく手にとったのですが、題名に惹かれました。「太陽の子」っていったいなんだろう・・

ストーリーは、神戸市に住む沖縄出身の人たちの日常生活を描くことで進みます。

主な登場人物は”ふうちゃん”とその両親。舞台は”てだのふぁ おきなわ亭”という沖縄料理の店。その店の常連さんたちがみな個性豊かな人たち。”ギッチョンチョン”とか”ギンちゃん”とか。

ベースになっているのが、”オキナワモンはあかん”という沖縄への偏見、それへの沖縄人の反発、そして、太平洋戦争の沖縄戦での…沖縄の人たちの苦しみと、癒えない(いえない)心の傷あとです。

重苦しいだけのお話では決してありません。登場人物がみんなとても明るいんですね。わたしも何人か沖縄出身のかたを知っていますが、みな明るいんですね。不思議でした。

それへの回答として、作者の灰谷さんは、

「”今ある生がどれほどたくさんの死や悲しみの果てにあるか・・”を皆が心の奥に秘めて、そこから底ぬけに明るい笑いが生まれ、そして深い涙のきらめき、そして喜びがあるのだ」
と文中で語っています。

私の文章力ではとても表現できないので、印象に残った3つの文を引用させてください。

『沖縄の人はみんな海が好きで、歌が好きです。草花を使って、きれいな凧(たこ)や舟を作ることだってできるし、きらわれもののカラスとでも仲良くするくらいのおひとよしで、けんかぎらいです。どんな人とでも友達になって、みんなで踊るし……」』

と、ふうちゃんがいいます。

『つらいめにあった者は、つらいめにあっている者の心がよくわかる。どんなにやさしい心があっても、つらいめにあったことのない人間は、つらいめにあっている人間の中にまで入ることはできないのだ…』

と、ふうちゃんはしみじみ思います。

『「生きている人だけの世の中じゃないよ。生きている人の中に死んだ人もいっしょに生きているから、人間はやさしい気持ちを持つことができるのよ、ふうちゃん」 』

と、ふうちゃんのお母さんがいいます。

引用は以上です。

この本は、1978年に出版され、当時大評判だったそうですが、今でも、いや今こそいろいろな人に読まれてほしいなと思いました。

ところで「太陽の子」の意味ですが、私の心ではなんとなくわかりましたが言葉では表現できません。ごめんなさい。「眼差し(まなざし)」がキーワードです。(2011/11/02)

追記(2016.08.26)
「NHKスペシャル | 沖縄 空白の1年~“基地の島”はこうして生まれた」をみて、”日本”に振り回された沖縄の人たちにとても申し訳けない気持ちになりました。この作品は何度も日本人向けに再放送してもらいたい。

(以上、目的に向かってのブログに書いたのをそのまま転載)
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