[感想]
今野さんの作品は、状況がわかりやすく書かれていて、かつ、途中でそれまでの状況を整理してくれるので、読者は話についていくうえで助けになりとてもありがたい。この作品は、アクションシーンのない一見地味な内容。研修戻りの倉島警部補に与えられた任務が、先輩の行動を監視しろというもの。さえないスタート。並行して起きた転落死事故も所轄署が自殺で処理したいと考えていて、刑事たちの士気も上がらない。そういうところから、先輩の葉山の行動と、転落死した津久見、ロシアの新聞記者ノボコフ、3者の関係を明らかにすることにテーマが絞られていく。途中で刑事と公安との軋轢があり、なかなか進展しない。
葉山が殺人の容疑者として浮上し、逮捕されてしまう。その葉山を救い出すために真犯人を見つけることが終盤のテーマになるのだが、消去法で行けば一人しか残らない。彼女の逮捕シーンが唯一のアクションシーンと言えるかもしれないが、さすがにキレがある。
取引による最後の締めくくり方が、情報戦というのはなんでもありなのね。と感じた。
倉島が仲間の協力を得ながら、最後は自分の意思を通す。今野さんの好きなタイプですね。
シリーズ前作の3つも見つけることができたらぜひ読んでみたい。(2017.06.25)
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