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ハリケーン(高嶋哲夫)

感想

本書「ハリケーン」は、またもや高島哲夫さんが現実を先取りして描く作品です。2018年1月の発行ですが、2020年現在でのこの1,2年のたび重なる超大型台風の来襲と土砂災害を再現するかのように描写します。”避難が間に合わなかったときには2階のなるべく山から離れた側に避難する”などは、このごろの気象庁の会見で何度も言われていることです。
高嶋作品ではいつものことかな?本作品は災害そのものの描写よりも、人物の描写に多くが割かれています。今回は、土砂災害で身内を亡くした人物が二人登場します。気象予報官の田久保と、広島での土砂崩れで家族をなくした純一です。二人には直接の接点はありませんが、周囲の人物の関わりを通して物語を深めてくれます。
山を切り開いて宅地を造成していく危険性を強く本書で訴えています。そのとおりだと思います。特に山裾と限りません。わたしが住む近所では、ちょっとしたスペースが宅地化していきます。散歩して廻っているうちに「こんな崖の上の間際に家を建てて大丈夫なんだろうか?」と素人でも心配になるところに4軒、5軒と家が建ったりします。昔から周囲の丘を削って段々畑のように家が立ち並んでいます。作品では”昔の基準では問題なかったことも、状況が激しく変わって危険性が飛躍的に高くなったところが多い。ということで説明されています。ではこれからどうすればいいのか?どうしようもないのか?作品では答えは出してくれません。歯がゆいですが、現実に住む我々が答えを出していかなければならないですね(2020/12/06)以下は本の帯の紹介文の引用です。

連続発生する台風、記録的豪雨と暴風、地盤の変容、急増する土砂崩れ……。「もはや、異常気象じゃない」自然の猛威に翻弄される気象予報官の焦燥と葛藤……。自然災害超大国ニッポンだから生まれたサスペンス大作
三年前に地元の広島で起きた土砂災害で両親をなくしている気象庁の予報管・田久保は、地球温暖化などの影響で、ますます頻発し大型化する台風の対応に忙殺されていた。私生活で家族を顧みることはほとんどなかったが、認知症を患う義母の介護のため、東京都の多摩ニュータウンにある妻の実家に転居する。直後、史上類を見ない超大型台風が太平洋で発生し、日本に向かった。広島の惨状を胸に刻みながら、進路分析や自治体への避難勧告に奔走する田久保、それでも関東では土砂崩れが次々と起こり、被害は多摩ニュータウンにも及ぶ。

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