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国鉄改革の真実 宮廷革命と啓蒙運動(葛西敬之)

せせらぎの花

感想

わたしは国鉄のストライキとか国鉄が分割民営化するのをリアルタイムで経験した世代です。本当にできるのかとか、一本でつながっているレールを地域で分割して本当にサービスが悪くなるんじゃないかとか思った記憶があります。割と他人事だったように思いますし、亡き父が国鉄マンだったことで関心はあったようにも思います。この本を眼にしてわりかし迷わずに買いました。読み始めるまでに随分時間がかかりましたが、読み始めると最後まで休まずに読み切りました。当時の政治の世界が知れたし、国鉄の資産の実際が知れたりして、とても興味深く読ませてもらいました。
著者の葛西さんは名前は存じ上げてましたが、この事業の当事者だったんですね。読んでいくうちに国鉄改革の問題点がかなり詳しく理解できたように思います。事業のの難しさがわかってくるにつれて、よく最後まで完遂できたなという感想が大きかったです。
問題点をよく分析してその本質を理解し、あるべき姿を探り、中長期のゴールを設定して、ひるまずに進んでいく。「バブルが弾ける前に運良く諸問題が片付いて天運が味方した」といった表現が作中でされていますが、運を自らの力で引き寄せたのだと思いました。
リニア中央新幹線の工事がJR東海の財源中心にで実施されています。それが不思議でしたが、本作を読んでその理由がよく理解できたとともに、日本の将来を見据えた事業であることもよく理解できました。応援したくなりました。(2020/08/01)
以下、帯に記載された文章を引用します。

”国鉄分割民営化の闘いとは一体何であったのか”
「国鉄では運賃、賃金、設備投資、路線の存続など重要事項の決定が全て政治に委ねられていたため、意思決定が常に不十分、不徹底、時期遅れとなりがちで、それが膨大な過去債務と余剰人員の原因となった。これら負の過去を精算し、将来に向かっては自律的責任体制を確立するのが民営化である。一方、地域分割の意図するところは、全国画一的な仕組みを改め、地域ごとの輸送コストおよび物価を運賃・賃金などに反映するとともに、内部補助の範囲を競争化時代に即して分割し、適正規模化することであった」(「はじめに」より)
 この目的を達成するために、国鉄改革は国民をも巻き込んだ「啓蒙運動」のかたちを取ったが、改革推進の中心にはこれを「宮廷革命(権力闘争)ととらえている人々がいた!!

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