感想
本書を読むと新宿の街の生い立ちや地理的な成り立ちに詳しくなれます。ガイドブックをようです。知っている町の名前や通りの名前が出てくるたびに、街の詳細地図を片手にして読み進めたくなりました。残念ながらストーリーを追いかけているうちにそういう思いが置き去りにされてしまいましたが、作者の文庫あとがきに記してありましたが、一度新宿の原点に立ち戻りたかったとのことで、なるほどです。
ストーリーは、引用した紹介文の通りで、中国人組織のボスと藤野組組員の真壁が最後に出会うシーンに向けていろいろな伏線を経て進んでいきます。
真壁を心の底から慕う雪絵。雪絵の母と孤独な老人・大江。真壁を思いやる鮫島。真壁の理解者の桃井など、登場人物それぞれが人を思いやる心情が良く書けている小説として読むのも一興かなと思いました。
(2020/05/20)
殺人傷害事件で服役していた藤野組組員・真壁が出所した。だが、真壁が殺そうとした男は、藤野組と組む中国人組織のボスになっていた。一方、高級車窃盗団を追う鮫島は、孤独な老人・大江と知り合う。大江に秘密の匂いを嗅いだ鮫島は、潜入した古家で意外な発見をした……。過去に縛られた様々な思いが、街を流れる時の中で交錯する。心に染みるシリーズ第8弾。