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下町ロケット ゴースト(池井戸潤)

桜

感想

「下町ロケット ゴースト」はテレビドラマを先に観ました。その原作なので当たり前ですが、ドラマの筋書きを観ているような気分になります。本作を読んでドラマを2度楽めた気分です。
とはいえ、ドラマで描ききらなかったことがあります。ここでは特許関連の内容について感想を書きたいと思います。
私の前職に知財関係の仕事があったこともあってとても興味深い内容でした。
主人公の佃たちが直面した問題は、”特許を取得して利益を上げているなかで、特許侵害を訴えられる。訴えてきた特許の内容を調べると、たしかに特許侵害している”、ということでした。なぜそのようなことになったか?
それは特許出願前にその特許となる技術情報が盗み出され先行して特許出願されていたというわけです。このあたりは企業スパイ小説みたいなお話です。このままでは訴えを退けることができません。絶体絶命です。
そこで出てきたのが、”特許出願時にその技術がすでに世の中に知られている場合は特許されない”、これを”公知”といいますが、公知であったことを証明しようとする考え方です。調査は困難を極めますが、身近なところにその証拠(文献)があったということで特許そのものがなかった、訴えそのものが無効になって落着します。
よく考えられたストーリーです。突っ込むとすれば、その証拠となった技術がその時点でなぜ特許出願されてなかったのか?という疑問が浮かびますが、それは言ってもしようがないことです。自分に身近な技術はとても特許にはならないと思いこむことはありがちなことです。私はこの作品が特許の実態の一端を紹介してくれたことに作品のおおきな価値を感じます。(2020/04/25)
以下、作品の紹介文を引用します。

倒産の危機や幾多の困難を、社長の佃航平や社員たちの、熱き思いと諦めない姿勢で切り抜けてきた大田区の町工場「佃製作所」。高い技術に支えられ経営は安定していたかに思えたが、主力であるロケットエンジン用バルブシステムの納入先である帝国重工の業績悪化、大口取引先からの非情な通告、そして、番頭・殿村の父が倒れ、一気に危機に直面する。ある日、父の代わりに栃木で農作業する殿村のもとを訪れた佃。その光景を眺めているうちに、佃はひとつの秘策を見出だす。それは、意外な部品の開発だった。ノウハウを求めて伝手を探すうち、佃はベンチャー企業にたどり着く。彼らは佃にとって敵か味方か。大きな挫折を味わってもなお、前に進もうとする者たちの不屈の闘志とプライドが胸を打つ!大人気シリーズ第三弾!!

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