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天切り松闇がたり第5巻ライムライト(浅田次郎)

赤い花

感想

闇の稼業の集団と言うんでしょうか。稼業と言っても人殺しとかではありません。安吉親分の配下に芸達者が揃います。仕立屋銀次が跡目とまで言った中抜きの名人、目細の安吉。正面切っての押し込み強盗、人呼んで説教寅。玄の前女掏摸、振り袖おこん。俺(天切り松のこと)に天切りの技を教えてくれた、黄不動の英治。そして主人公の天切り松こと松蔵です。それぞれが活躍する場面を、天切り松が警察署の中で署員たちに語って聞かせるというのがこのシリーズの構成になっています。ハギレのいい語り口が魅力です。
このシリーズの第5巻目の表題作「ライムライト」では、黄不動の英治がチャップリンの替え玉になったという「話せば分かる」で有名な五・十五事件の裏の顛末を松蔵が語ってくれます。チャップリンの初来日と五・十五事件とが同じ時期だったというのが奇跡のようなのに、更にチャップリンが災難に遭いかかったというお話が真に迫っていて結構惹きつけられます。
チャップリンの映画はまだよく観たことがありませんが、これを機会に「ライムライト」を観てみたくなりました(2020/04/22)
文庫本浦表紙の説明文を引用しておきます。

チャールズ・チャップリンがやってくる!!昭和七年五月、日本中が彼の来日に沸くなか、安吉一家の耳に驚くべき噂が飛び込んできた。チャップリン暗殺―。信念を持つこの稀代の芸術家を殺させてなるものか。世間を混乱させることなくテロリストの魔の手を振り払うため、いなせな夜盗たちが東京の街を所狭しと走り回る。表題作ほか全六編を収録した大人気“天切り松”シリーズ待望の第五巻。

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