ランクA病院の愉悦 (新潮文庫)
医療小説って、専門的な話なようで、身近に感じられるから不思議。何か自分のことのように感じられて読んでいても引きこまれる。
5編の中では、「ガンコロリン」が本当に皆が夢見て待ち望んでいる薬の開発が成功した話で、こうなればいいなと読み進めていってしまった。最後の疫学的見地に関するどんでん返しが、なるほどと感服。これじゃ人間は永久に病気からは逃れられないのね。
「被災地の空」は東北大震災発生の時の、救急医療隊の活動をベースに書かれている。現場の混乱、せっかく駆けつけても重症患者を診ることができないというもどかしさが伝わってくる作品。
「ランクA病院の愉悦」は主人公終田のへそ曲がりで頑固な性格が著者の姿を映しているようで笑える。病院をランクAからランクCまでに分けるという未来の設定になっているが、確かに作者の言うように、これは現在の医療格差そのものを皮肉っていますね。ばかばかしいくらい皮肉っぽい。
海堂さんは、あとが気によると、今後は医療小説から離れて、キューバのチェ・ゲバラにまつわる小説にシフトするらしい。そういう分野は読んだことがないが、海堂さんの小説なら機会があれば読んでみたいな(2017.05.10)
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