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LAST(ラスト)(石田衣良)


LAST (ラスト) (講談社文庫)

[感想]

この本は、作者が『4TEEN』で直木賞を受賞後の第1作。
作者が言うように、”がらっとイメージが変わって、ダーク&ビターで現実の重さをしっかりと描いたヘビー級のミステリー”です。
「おれを押すな。こっちはもうギリギリ崖っぷち」という様々な男女の物語が、7編収録されてます。
「ラストライド」
 債権業者は、このように逃げ場のないようにして追い詰めてくるのか。
実際にありそう、あったと思わされる怖さです。
こうなってしまうとどうしようもない怖さ・・
「ラストジョブ」
 『身障者の性や恋愛を書いたノンフィクションとデフレで住宅ローンの破たんが多いという新聞記事が、頭の中でスパークして、こんな形の小説になった』
なるほどです。石田衣良流の、一つの解決策の提案でしょうか。
「ラストコール」
 テレフォンクラブのブースのなかだけで起きるホラー。
今は何が起こっても不思議ではない現実、実際に起こっても驚かないぞ!
「ラストホーム」
 上野公園のブルーシートハウスの中で起こる人情話?
作者が好きなかき屋のミチヨ、再再登場させてほしいな。
「ラストドロー」
 盗難通帳からかなを引き出す出し子をテーマにした作品。
確かにいまではありえない話です。
作者が語るように、最後は確かに甘い結末。
でも、これが石田作品の良いところだと私は思います。
「ラストシュート」
 東南アジアで十代未満の子供を買う先進国の男たちの話。
他の作者の作品でも読んだことがあるので事実なんですね。
こんな形でしかストレスを解消できないなんて、なんて人間とは怖い動物なんだろうと思わされました。
「ラストバトル」
 暴力団が、人を人とも思わないというのはよく言われている?
ことなので、この話の展開は実にありそうだと思います。
最後は、こんなんであとくされがなくなったの?とちょっぴりおもいました。

この厳しい社会の中で、本当に追い詰められても、何か救いがあるはず。
そんなヒントが埋め込まれていると思わされる連作集でした。(2013.07.18記)
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