議論の作法(櫻井よしこ)

花

『感想』

本書は櫻井よしこさんが心がけている作法に従って行われた議論集です。
その作法とは、

  1. 「事実」に忠実であり続けること。
  2. 相手の言い分に、十分に耳を傾けること。
  3. 自分が正しいと確信していることは譲らないこと。
  4. ユーモアのセンスを忘れないこと。
  5. 日本人としての誇りを基本とすること。

8つの議論が収録されています。
どのテーマも議論する双方の主張が真っ向から激突しそうなものばかり。下手をすると上っ面の議論で終わってしまいそうなテーマです。実際、この本を読んで初めて知ったことも多いです。櫻井さんは相手と上手に議論しているんですね。そのおかげで、深い内容になっているのだと感じました。
初めて知ったことをいくつか列挙しておきます。
尖閣諸島問題は、問題を棚上げしている(問題と認識している)としているのは中国側だけであって、日本政府は一切棚上げしたとは認めていないこと。
チェルノブイリ原発事故で事故の悲惨さばかりが報道されているが、ウクライナの風評被害対策が着実に行われて効果が出ている事実が日本では全く報道されていないこと。ウクライナの事例が民主党政権時代にレポートとして届けられていたのに、全く無視された事実。
地球温暖化対策はCO2削減ばかりが取り上げられているが、実は地球の自然の周期変動によるものが大きいという説をもっと真剣に考えて対応してもよいのではないか。日本だけが京都議定書で厳しい制約を課され、その対策として開発途上国からお金を払ってCO2排出権を買い取るなどということはお金をドブに捨てるようなものであること。もっと他にお金の使いみちがある。
ゆとり教育の弊害についての議論はすべてが耳新しいこと。一人の官僚が旗振り役を努めたようだが、それまでの詰め込み教育批判などの時代の潮流もあったということ。いろいろあるにせよ、きちんと教育されなかった子どもたちへの救済はないものだろうか?
などなど、知って考えさせられることがありました。
私は、これまでは、櫻井さんの話し方はおっとりとしていると感じたりしてましたが、本書を読んで考え方が変わりました(2021/08/19)

以下、本の表紙の説明文を引用します。

議論は「勝てばよい」ものではありません。意見や立場の異なる人々に自分の考えを受け入れてもらうためにはどうすればいいのでしょうか?有益な結論を導くために、私が信条としている「作法」を公開します。

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