我が家の問題(奥田英朗)



我が家の問題 (集英社文庫)

[感想]

こちらも”家日和”と同様に6編の短編で構成されている。「甘い生活?」「ハズバンド」「絵里のエイプリル」「夫とUFO」「里帰り」「妻とマラソン」それぞれ味わい深い。中身の分析については吉田伸子さんの解説で言い尽くされている。ここでは私なりの細かな感想。
「甘い生活」至れり尽くせりの奥さんにウットオしさを感じる夫。一人の生活が長すぎて、構われるのがうっとおしく感じる”独身病”といわれて納得。かまってもらえれば最高なのになと感じるのはおじさんのひがみか^^。

「ハズバンド」段取りができなくて会社では厄介者の夫を、手作りの心のこもった弁当を持たせることで励ます妻が、うらやましい。

「絵里のエイプリル」夫婦の不仲をひょんなきっかけで知らされ、それから観察を続ける娘。やたらと夫婦喧嘩をしていれば子供にもすぐ気づくだろうけど、コールドウォーだとなかなか気づけないかも。ちょっと変わった作品。

「夫とUFO」夫のおかしな言動を真剣に心配する妻。夫を追跡してみたり、昔の会社の同僚に相談してみたり、こんなに相手のことを気遣える妻は素晴らしい。「これからおとうさんを救出してきます」の言葉はジーンときて圧巻。

「里帰り」新婚での初盆、旦那の実家が北海道で奥さんの実家が名古屋。確かに一挙に回るのは大変。それをやろうとするのもすごい。私にはとてもできません。それぞれの実家で緊張しまくりながらも、格好をつけながらもなじむことができる。いいですねえ…。良いところを見つけるように考えれば世の中うまくいく?

「妻とマラソン」前作の”家日和”の「家と玄米御飯」の後日談。ロハスに夢中だった妻は今はしっかり専業主婦に専念。唯一の趣味がランニング。そんな妻の寂しさを気遣うN木賞作家の夫。こういう気づかいができれば夫婦の中は長続きするんだろうな。東京マラソンに妻が出場し、夫と息子二人で心から応援する風景と心情。これこそ、作家奥田英朗の真骨頂。心が暖まりました。(2016.12.16)
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