ロスジェネの逆襲(池井戸潤)



ロスジェネの逆襲 (文春文庫)

[感想]

相変わらず作品の構成がしっかりできている。読み進めていっても迷うことが少ない。巻頭の人物相関図も役に立つ。

ただ、銀行の証券業務の宣伝のために500億円もの追加融資が決定されていくのかというところには、首をかしげる。

銀行だから、庶民の間隔とは違う桁の違う話なんだろうか。
企業買収も、千億円単位の話だし、ちょっと違和感を感じる。

メインストーリーへの感想はともかくとして、
タイトルの「ロスジェネの逆襲」奇妙なタイトルである。

ロストジェネレーション、略してロスジェネ。なるほど。
失われた20年とかは聞いた記憶があるが、失われた世代か。

“ロスジェネ”をネットで検索するとヒットします。知らなかったのは私だけ?

そのロスジェネ世代の代表である、森山の愚痴っていること。
「自分はバブル世代の被害者だ」
「何一ついい目にあってこなかった」

これらは、何だかよく分かる。
かくいう私は、団塊の世代の直後の世代の一人。私は何世代?バブル世代?

私も物事が困難にぶつかると、
「わたしはいつも団塊世代の後始末をさせられている」とこぼしていたっけ。

この作品の最終盤で半沢から発せられた幾つかの言葉はとても心に響く。

長くなるが、引用する。

「世の中を儚み、文句をいったり腐してみたりする……。でもそんなことは誰にだってできる。お前は知らないかも知れないが、いつの世にも、世の中に文句ばっかりいってるやつは大勢いるんだ。だけど、果たしてそれになんの意味がある。例えばお前たちが虐げられた世代なら、どうすればそういう世代が二度と出てこないようになるのか、その答えを探すべきなんじゃないか」

「あと十年もすれば、お前たちは社会の真の担い手になる。そのとき、世の中の在り方に疑問を抱いてきたお前たちだからこそ、できる改革があると思う。その時こそ、お前たちロスジェネ世代が、社会や組織に自分たちの真の存在意義を認めさせるときだと思うね。

オレたちバブル世代は既存の仕組みに乗っかる形で社会に出た。好景気だったが故に、世の中に対する疑問や不信感と言うものがまるでなかった。つまり、上の世代が作り上げた仕組みになんの抵抗も感じず、素直に取り込まれたわけだ。だがそれは間違っていた。そして間違っていたことに気付いたときには、もうどうすることもできない状況に置かれ、追い詰められていた」

私は、文句だけ言っていた。世の中の仕組みに多少疑問は感じても、何もできなかった。ただただ反省。

池井戸潤氏が贈るロスジェネ世代へのエールに、私も賛同。
(2018.02.08)
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