モンスター(百田尚樹)

あじさい

『感想』

小説家百田尚樹のチャレンジングな作品。一人の女性の飽くなき美への願望を描きます。ブルドッグのような顔に生まれて幼少期から周りの男女から蔑まれ育った主人公。根性までひねくれてしまいながら成長していきます。
幼い頃に唯一自分をかばってくれた少年への淡い恋心、それが心のなかでどんどん成長していき、本人が意識しないままに、主人公の整形手術を繰り返し絶世の美女に変身を遂げることの原動力になっていきます。
整形手術の詳しい描写のリアリティは、資料を徹底的に読み込む百田尚樹氏の力量が100%結実しています。その詳しさやリアリティさに、私も、テレビで多く見る美人タレントの顔をまじまじと見てしまいたくなりました。
この小説は、ある意味で女性版の出世物語として読めます。百田さんは本当に上手な書き手です。文庫本で500ページ近くありますが、読者を飽きさせないで、どんどん作品の中に引き込んでくれます。
主人公はお金を稼ぐために体を売る商売を重ねますが、その描写もくわしく、幻冬舎文庫ならではの異色作です(2021/07/31)
以下、本の表紙の説明文を引用します。

田舎町で瀟洒なレストランを経営する絶世の美女・未帆。彼女の顔はかつて畸形的にまで醜かった。周囲からバケモノ扱いされる悲惨な日々。思い悩んだ末にある事件を起こし、町を追われた未帆は、整形手術に目覚め、莫大な金額をかけて完璧な美人に変身を遂げる。そのとき亡霊のように蘇ってきたのは、ひとりの男への、狂おしいまでの情念だった……。

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