砂の王国(荻原 浩)

 

感想

久しぶりに荻原さんの作品を読みます。わたしの勘違いかもしれませんが、ほんわかとした印象を持っていましたが、この本はちょっと違いました。期待はずれという意味ではありません。
第1章はホームレスの生活がリアルに描かれます。まるで実体験をしたようです。食べるものも食べられず、プライドを捨て去っていくことでようやく生きていける。プライドを捨て去ることで別な平安が得られる。自分が体験したいとは決して思いませんが、気の持ちようということなのか。
最近外国人労働者の雇用問題が騒がれてますが、ホームレスとかニートの雇用対策にも税金を使ってほしいと思います。
2章からは主人公の山崎がアイデアを出して新興宗教を立ち上げていく話になります。この話も実にリアル。まるで世の中を騒がした〇〇教のことを言っているよう。教団がどのような人々で構成され、どのようにして大きくなっていくかを事細かに描写してくれます。
それに集まってくる信者たちの様々な思いや行動も描かれます。なぜひとは宗教に惹かれるのか、狂信的になっていくのかがわかるような内容です。
私が最近読んだ[7つの習慣」ではまず最初に”主体的に生きる”という題1の習慣が上げられています。ひとがなかなか主体的に生きられない人間の弱さ、何かに頼りたい、なにかに決めてもらいたい、そういったひとの本質の一端が砂の王国で描かれています。
3章では、拡大する[大地の会」をコントロールしきれなくなる山崎の煩悶が描かれます。
突っ走っては見たけれど、どんどん自分が思い描いたものとはかけ離れていく大地の会。
自分は一体何をしたかったのか?と自問自答しながらどんどん破滅に向かって行きます。
”いったい山崎はどうなってしまうのだろう”と、どんどん心配させれていく展開です。息苦しくなります。
ひっぱりに引っ張ってあっけなく幕が閉じてしまうわけですが、最後でようやく荻原さんらしい人間へ込める優しい眼差しみたいなものを感じられてホッとした次第です。
重いテーマで終盤息切れしそうになるところで、話を急展開させて最後まで読ませてホッとさせてくれる。そういう作品です。(2018.12.27)

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