下町ロケット ヤタガラス(池井戸潤)

芽吹き

感想

本作は無人農業技術開発とその実用化に向けてしのぎを削る人たちの姿を描いた物語です。前作の「下町ロケット ゴースト」に続く物語の完結部分です。
開発で先行した無人農業トラクター「ダーウイン」は、発売後に発見された構造的欠陥を克服できずにリコールの窮地に立たされます。ライバル会社の佃たちが持つ特許の使用許諾を受ければ問題が解決できますが、それまでのしがらみで簡単には受けられません。最終的には、ユーザーである農業者のことを考えた佃たちが特許技術の使用が許可して問題が解決します。物語はいろいろな問題にぶつかりながらも佃たちが正義のヒーローとして活躍し、読みおわったあとも胸のすく快感を味わせくれる娯楽小説として楽しめます。
すこし物語の核心に触れてみたいと思います。なぜ「ギアゴースト」の伊丹や「ダイダロス」の重田は結局成功できなかったのだろうかです。作中にその答えがありました。
”一時的に技術的優位に立てても、それ以降の世の中の進歩に合わせて技術改良を進めていかなければ技術はすぐに陳腐化してしまう”。これがこの物語の大きなテーマのように思いました。途中で起きる様々な問題の原因がすべてこのテーマに行き着くように思えるからです。本作には娯楽小説としてだけではなく、技術者としての生き方についての深みを感じさせてもらいました。(2020/04/25)
以下、作品の紹介文を引用します。

社長・佃航平の閃きにより、トランスミッションの開発に乗り出した佃製作所。果たしてその挑戦はうまくいくのか――。
ベンチャー企業「ギアゴースト」や、ライバル企業「ダイダロス」との“戦い”の行方は――。
帝国重工の財前道生が立ち上げた新たなプロジェクトとは一体――。
そして、実家の危機に直面した番頭・殿村直弘のその後は――。
大きな挫折を経験した者たちの熱き思いとプライドが大激突!
準天頂衛星「ヤタガラス」が導く、壮大な物語の結末や如何に!?
待望の国民的人気シリーズ第4弾!!

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